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心身への精油の作用


ココロに働きかけるエッセンシャルオイル

  精油、またその原材料となるハーブは、遠い昔から「薬」として扱われてきました。西洋でも、東洋でも、それら植物が持っている薬理作用が注目され、使用されてきたのです。

  実際に「エッセンシャルオイルの成分」のところで出てきたように、精油に含まれている化学成分には、さまざまな薬効や作用を持つものがあり、中には医薬品の原料成分として使われているものもあります。

  エッセンシャルオイルは、そのような成分による働きに加えて、もうひとつ『心地よい香りによって人の心を癒す』という重要な側面をもっています。

  つまり、嗅覚をとおしてわたしたちの心や精神をつかさどる「脳」に直接はたらきかける、ということなのです。

 

  コーヒーやレモンの香り、好きな花の匂いなどを嗅ぐと、気分がよくなったり、すっきりする…そういう経験は、誰もが持っています。
「香り」がココロに影響するというのは、いったいどんな仕組みによるのでしょうか。

  わたしたちの鼻の中、鼻腔のいちばん上の奥まったところに、その数200万個ともいわれる嗅覚細胞があります。これは神経細胞の束からなっていて、その先端の部分が鼻に入ってきた香りの分子をキャッチし、瞬時にそれを電気信号に変えます。そしてこの嗅覚細胞の反対側は、脳の「大脳辺縁系」と呼ばれる場所に直接つながっています。

  大脳辺縁系は、記憶、情動、本能などの中枢です。
つまり、わたしたちの「好きか、嫌いか」、「気持ち良いか、悪いか」、「危険か、安全か」…といった、基本的な感情や、本能的な反応を生み出しているのが、脳のこの部分だというわけです。

  わたしたちはときどき、どうしても嫌な何かを「生理的にイヤ」といったりしますよね。その反応を生み出しているのも、大脳辺縁系なのです。

  脳のこの部分にダイレクトに信号が伝わるわけですから、香りが特にわたしたちの感情を左右するものであるわけも、理解しやすいと思います。

  精油の芳香分子が信号となって大脳辺縁系に伝わるとき、「脳内モルヒネ」と呼ばれる快感物質の分泌が促進されることが、最近わかってきたそうです。
脳内モルヒネとは、β-エンドルフィンをはじめとする数種類のホルモンで、痛みを和らげ、気分を良くさせる働きを持っています。

  エッセンシャルオイル、特に自分の好きな香りのものを嗅ぐと、そのような物質がわたしたちの脳の中でどんどん作り出され、ストレスを和らげたり、安らぎや幸福感、精神的な安定を生み出すことができるのです。

 

  また、香りの信号は大脳辺縁系から脳の「偏桃核」と呼ばれる部分に伝わります。
実はこの部分は、トラウマや恐怖感の主要な中枢で、香りがその働きに深く影響することが最近の研究でわかってきました。
そのため、精油の芳香が、過去の体験からくる情緒的トラウマの除去へと導くうえで、大きな助けになるのではないかと考えられるようになっています。

   芳香がわたしたちの心や精神に作用することに関しては、まだまだ未知な部分がたくさんありますが、脳と心に関する研究がすすめられていくにつれて、これからますますエッセンシャルオイルのすばらしい働きについても理解が深まっていくに違いありません。



免疫も助けるエッセンシャルオイル

  精油の香りの信号は、嗅覚神経から大脳辺縁系を経て、脳の「視床下部」という場所にも伝わります。
視床下部は良い刺激を受けると、やはり脳の「下垂体」というところに指令を出し、免疫力に深くかかわるホルモンを出させます。

  この視床下部は自律神経の中枢でもあり、免疫機能を含むからだ全体の機能をコントロールしているところです。
それで、この場所に適切な刺激を与えることで、免疫の働きを調整する助けになります。

 

  また、精油の香りの信号が脳を伝わるときにβ-エンドルフィンなどの脳内モルヒネが分泌されるということは前にも触れましたが、β-エンドルフィンは痛みを和らげ、気分を良くするほかに、身体の免疫力を高めるという効果も持っています。

  脳と免疫力についての最近の研究では、アメリカ、チェスター大学のデビッド・フェルトン教授が、脳内にβ-エンドルフィンが現れると、免疫細胞の一種であるNK(ナチュラル・キラー)細胞の活性も高くなり、免疫力が向上することを明らかにしています。

 

  精油の香りは目に見えない「薬」のように、人の心を癒し、ストレスの苦痛を和らげ、さらに身体の機能を元気へと導いていく、まさにホリスティック(人の全体)に働く、すばらしいものなのです。